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【保険診療】眼瞼下垂症(がんけんかすいしょう)手術について
眼瞼下垂症とは?
- 眼瞼下垂(がんけんかすい)とは、まぶた(上瞼)を引き上げる仕組みの中で『どこかの部分』に異常が発生し、まぶた(上瞼)を上げたくても上がらない状態のことで、まぶたが垂れ下がり目が開けづらくなります。
- 先天性眼瞼下垂、後天性眼瞼下垂、偽眼瞼下垂があり、特に多いのは後天性眼瞼下垂です。加齢によるもの、ハードコンタクトの長期装用などが原因で多いですが、白内障・緑内障・硝子体手術を行った既往のある方にも多いとされています。
眼瞼下垂症の診断
- 眼瞼下垂症の診断にはMRD−1(margin-reflex distance−1)という指標が使われます。これは黒目の中心とまぶた(上瞼)の縁との距離を意味しており、数値が2.7mm未満になった場合に眼瞼下垂症と診断されます。
- ○軽度の眼瞼下垂:MRD-1が2.7mm未満からまぶたが瞳孔(ひとみ)にかかる1.5mm前後まで
- ○中程度の眼瞼下垂症:MRD-1は1.5mmを下回って-0.5㎜前後まで
- ○重度の眼瞼下垂症:まぶた(上瞼)が瞳孔(ひとみ)をふさいだ状態(-0.5mm以下)
眼瞼下垂症の代償反応〜額のしわ
- 眼瞼下垂症になると、上げにくくなった状態のまぶたを無意識に助けようとする動きが生まれます。額の筋肉(前頭筋)が眉を上げ、眼瞼挙筋の働きを補助する様に作用します。この場合、一見、たるみもなく眼瞼下垂症も存在しない状態になりますので、特に症状も気にならない方も多いと思われますが、眼瞼下垂症に伴って生じる付随症状(肩こり・頭痛・眼精精疲・不眠・眠たそうな印象)のほとんどが、前頭筋が代償性に眼瞼挙筋を補助する過緊張によって引き起こされるものだと言えます。
眼瞼下垂症の症状
- 眼瞼下垂症では『目を開けにくい』といった開瞼障害の他に多彩な症状が起こりえます。ただ、これら全ての症状が眼瞼下垂になればおこるわけではありません。
- 開瞼障害・まぶたが重い
- 肩・頚こり
- 頭痛
- 睡眠障害
- めまい
- 自律神経失調
- 気分障害、不安障害
- 線維筋痛症
眼瞼下垂症〜整容面の症状
眼瞼挙筋の機能が低下すると、
- A.まぶたが黒目に覆いかぶさり黒目が欠けて見える。
- →にらんで見える、目つきが悪いと言われる。
- B.代償性におでこの筋肉(前頭筋)を無意識に使って、上まぶたを助ける。
- 眉毛を上げて額にしわができる。
- アゴを突き出して物を見るようになる。
- 目の上がくぼんで見える。
- 二重の幅が広く見える。一重だったのが二重になった。
- 眠たそうな印象になる。
眼瞼下垂症の手術適応基準〜当院の考え方
どの程度で手術適応となるの?
- 初診時、手術を受けると自分で決めて来られる方がたくさんいらっしゃいますが、希望されたら全員を手術するということはしておりません。
- どんな手術にも必ず術後合併症などのリスクがありますので、『手術をすることで期待される症状の回復』と『術後起こりうる合併症などのリスク』を比較し、前者が上回ると判断した場合に手術適応とさせていただいております。
- 手術適応の可否についての最終的な判断は医師がする。
- 整容目的手術ではないことを理解している。
- 手術のメリットだけでなく、デメリットも十分に理解している。
を原則に、
- 中等度から重度の眼瞼下垂症と診断、かつ、症状でお困りの場合
- 軽度であっても、長年眼瞼下垂症特有の症状に悩まされている。かつ、眼瞼下垂手術により改善される見込みがある場合
眼瞼下垂症手術(保険診療)
A.挙筋前転術
- 重瞼ラインに沿って1.5〜3cm程度皮膚を切開し、余剰皮膚があれば同時に切除します。
- 挙筋腱膜とミュラー筋を剥離し腱膜前転させて瞼板に固定。
- 左右差を座位にて確認後、二重ラインを形成していきます。
- 必要あれば脂肪も一部除去し、止血を確認後皮膚縫合します。
B,偽性眼瞼下垂症に対して余剰皮膚切除術〜眉下切開・重瞼切開〜
***偽性眼瞼下垂症とは?***
まぶた(上瞼)を引き上げる仕組みの中で『どこかの部分』に異常が発生し、眼瞼下垂症と言われる様になりますが、皮膚のみの問題(加齢によりまぶたの皮膚が垂れ下がって、視界をさえぎっている状態)で目が開けづらくなります。
- 重瞼ライン、もしくは眉毛下に沿ってに皮膚を切開し、余剰皮膚を切除します。
- 座位にて左右差を確認後、二重ラインを形成していきます。
- 必要あれば脂肪も一部除去。止血を確認後、皮膚縫合します。
- *手術は傷が目立たない様に、自然な目元になる様に細心の注意を払います。
- ただし、術後合併症として内出血、腫脹、血腫、感染、ドライアイ、瘢痕、ケロイド、色素沈着、硬さ、左右差、兎眼、複視などが 起こることがあります。手術による治療を希望される方はご相談ください。
眼瞼下垂症手術(保険診療)はこんな方が適応
- 手術適応基準を満たす方
- 術後合併症やリスクについて十分理解している
- 再発症例の方
- 整容目的では無いと十分に理解している方
眼瞼下垂症手術(保険診療)の概要
- 麻酔:局所麻酔
- 所要時間:両脇30〜60分程度
- 洗顔・シャワー:翌日よりシャワー可。創部は濡らさない様にしてください。
- 術後3日間をピークに約1週間は腫脹や内出血が目立ちます。
- 施術費用・片側 7,200点・両側14,400点 ・自己負担額(眼瞼挙筋前転法・手術費用のみ、3割負担の場合) ・片側 21,600円、両側43,200円となります。
眼瞼下垂症手術(保険診療)〜のリスク・合併症
- 内出血・腫脹
- し開・縫合不全
- 創部感染
- ドライアイ
- 異物感
- 左右差
- 兎眼
- 浮腫
- 知覚鈍麻
- 瘢痕・ケロイド
- 外反
- 再発
- たるみ残存
- 二重幅などの整容面